親族間の問題・扶養義務について

 春もたけなわのこの頃ですが、皆様方におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。相模原市南区相模大野で執務しております弁護士の細貝です。

 本日は、親族間の扶養義務に関する疑問についてお答えいたします。

Q1:扶養義務を負う者の範囲は?
A1:直系血族および兄弟姉妹です(民法877条1項)。
 特別の事情があるときは、家庭裁判所は審判により、三親等内の親族間においても扶養義務を負わせることができます(民法877条2項)。

Q2:扶養義務はどのような場合に認められるのですか? 
A2:扶養義務は、扶養権利者(ご両親など)に十分な生活能力がなく援助を受ける必要性がある場合に(要扶養状態)、扶養義務者に扶養能力がある場合に限り発生します。
 扶養権利者がご自身の年金等で生活を維持できる場合には、要扶養状態にはないことになります。
 また、扶養の程度は、生活扶助義務と言われるもので、ご自身の生活に余力(扶養能力)がある場合に、援助すべき義務であるといわれています。
 したがいまして、生活に余力のない状態にもかかわらず、扶養料が課せられることはありません。
 扶養料を支払うべき複数の扶養義務者が存在し、当事者間で扶養料の分担について協議が調わないときは、家庭裁判所に対して調停・審判を申し立てることができます。最終的には、家庭裁判所が各自の生活状況や資力その他一切の事情を考慮して、審判で決定します。

Q3:両親の面倒を見なかったことによって、過去の扶養料を請求されることはありますか?
A3:扶養権利者の面倒を見ない扶養義務者がいたとき、裁判所が、その裁量により、相当と認める範囲で過去に遡った養育料の支払いを命じることができるとした裁判例があります(東京高裁昭和58年4月28日決定。家裁月報36巻6号42頁等)。
 裁判所は、扶養の期間、程度、各当事者の出費額、資力等の事情を考慮したうえで、負担が公平になるよう内容を定めることができると判示しています(東京高裁昭和61年9月10日決定)。
 したがいまして、過去の扶養料を請求される可能性はありますが、時効の関係で(民法169条。定期給付債権は5年で短期消滅時効にかかります)、5年以上遡って請求が認められる可能性は少ないものと考えられます。