有責配偶者からの離婚請求について

 相模大野の弁護士の細貝です。
 今回は有責配偶者からの離婚請求の可否についてお話ししたいと思います。

 有責配偶者とは不貞・遺棄・虐待など、婚姻上の諸義務に違反する行為をした配偶者のことを言います。
 裁判所は、このように自ら婚姻関係を壊すようなことをした有責配偶者からの離婚請求を原則として認めていません。
 もっとも、どのような場合にも認められないかというと、そのようなことはありません。
 最高裁大法廷昭和62年9月2日判決は、①別居期間の長さ、②未成熟子の存否、③苛酷状態の有無等の事情を総合的に考慮して、有責配偶者の離婚請求が信義則に反するといえない場合は、当該請求も許されると判示しました。
 そのため、裁判においては、この3要件の適用が問題になります。

①別居期間の長さ
 上記判決の事案は、別居期間が36年という長期に及んでいたため、「両当事者の年齢及び同居期間と対比するまでもなく相当の長期間である」としました。
 その後の裁判例を見ると、「相当の長期間」とされた期間は徐々に短縮され、およそ8年が一応の分水嶺と考えることが出来ます。もっとも、平成8年に答申された婚姻制度等に関する民法改正要綱試案では「5年の別居」を離婚原因としていますので、近い将来5年位になるかもしれません。東京高裁平成14年6月26日判例のように、別居期間6年で有責配偶者からの離婚請求を認めるものもあります(上告が却下され確定しています)。

②未成熟子の存否
 未成熟子とは、親から独立して生計を営むことができない子のことを言います。裁判所は、未成熟子が存在する場合には、基本的に有責配偶者からの離婚請求を否定しています。

③苛酷状態の有無
 離婚により「経済的」に苛酷な状態に置かれるか否かを見ます。相手方配偶者の経済的基盤が不安定で、離婚により生活が困窮する場合は、離婚請求が認められません。逆に、相手方配偶者が、別居期間中も自己の収入や資産により経済的に安定した生活を送っている場合や、離婚後に生活を補償する離婚給付が予定されている場合などは、経済的苛酷状況が否定されます。